8/22 new!! ゆるゆると誰にいうわけでもなく誰が知るわけでもなく更新していきたい。

2016/12/26

100のお題 21.雲一つ無い青空(戯曲)

21.雲一つ無い青空

少年
少女



☆少年と少女は原色の衣装、男と女はモノクロの衣装。途中、二度入れ替わる
☆初めのシーンでは、モノクロの男の服のどこかに花がついている

暗転のなか、女の声がする

女  花を育てなさい。そして、ただただ生きなさい。この場所でただ育って、枯れて、また生まれて。ここは、そういう場所だから

ゆっくりと明転
男、立っていて、指示棒で何かをさしている
少年、女のひざで寝ている
少女、三角すわりで真面目に授業をきいている

男 はい、ここまでがドームの歴史だ。質問あるか?
少女  はい
男  なんだ?
少女  これからドームはどうなるの?
男  ……それは、まぁ、なんだ。お前たちがどう生きるかって話か?
少女  ……うぅん
男  知っての通りだが、明かりはあるし綺麗な水もでる。自給自足で間に合ってるんだから問題はない。あんまり深く考えるな。こいつみたいに

男、少年を引っ張り起こす

男  はい、おはよう。もう一度授業をやりなおそうか?
少年  大丈夫
男  だよな、飯にしよう

女、一度はけてバスケットと布をもってくる。四人でピクニックのように食事の準備をする

女  はい、じゃあ手を合わせて
全員  いただきます

サンドイッチのようなものを食べている
ゆっくりと暗転

抑えた声で話す
会話中、徐々に明るくなっていく
男と女、グラスで飲み物を飲んでいる

男  なぁ、もういいんじゃないか
女  ……なにが?
男  いつまで俺たちは生きているんだ
女  生きていられるだけ
男  いつまで生きていられるんだ
女  その時は、その時よ
男  いつまでその時を待つんだ
女  生きてるだけじゃだめなの?
男  違う
女  なにが
男  俺たちは生きてるんじゃない、死んでないだけだ
女  ……

少女、静かに入ってくる
女が先に少女に気づき、男が後から気づく

女  あら、目が覚めちゃったの?
少女  ……お酒?
女  そうよ、大人だからね
少女  えぇ、ずるい
女  すぐ大人になるからね
少女  うぅん
男  寝れないのか?
少女  怖い夢みちゃった
男  そうか
少女  白いおひげの生えた人がね、ベットで苦しそうにしてるの
女  そうなの?
少女  なにもできなくて、それをずっと見てるの
女  ……

女、少女を抱きしめる

女  怖かったね、じゃあ寝にいこっか
少女  大丈夫、ぎゅってしてもらえたから怖くなくなった
女  そう

少女、一人で帰る

女  覚えてるのかしら
男  なぁ、なんで
女  いいの。私たちはこうしていくしかないの。私たちのずっと前から、ずっと後まで
男  ……ふざけてる
女  真剣よ

男、酒を飲む
ゆっくりと暗転

明転

女と少年、座っている

少年  なんでそんなになるのに酒なんかのむの?
女  飲み過ぎなければ、楽しいのよ?
少年  でも飲み過ぎたんでしょ?
女  そうね
少年  やっぱり大人って馬鹿だなぁ
女  そう、馬鹿よ
少年  え?
女  ちょっと長く生きただけで、子供と変わらないわ
少年  そうなの?
女  そうよ、知らないこともいっぱいあるし、知る前に死んじゃうわよ、きっと
少年  いいの?
女  え?
少年  その知らないこと、知りたくないの?
女  うーん、大人はね
少年  うん
女  知りたくなくなっちゃうんじゃないかな
少年  えー
女  もういっぱい知っちゃってるから、困らないもの
少年  でも、もっともっと知らないこともあるんでしょ?
女  そうね
少年  じゃあおかしいよ。知らないままって悔しくない?
女  悔しい?
少年  だって、知らないことがあるって知ってるのに、それを知らないまま死ぬんでしょ?
女  そうね
少年  いやだよそんなの。大人ってわかんない
女  大人になったらわかるかもね
少年  わからなくていいけど
女  美味しいお酒も飲めるわよ
少年  飲み過ぎて勉強の時間に起きられない大人がいるからやだよ
女  その通りね

二人、笑っている

暗転

明転
男と少女。男は寝ている。少女は心配そうに見ている

男  ……もう大丈夫だぞ、吐かんぞ
少女  本当?
男  多分
少女  はぁ

少女、グラスに水を入れてもってくる

男  ありがとう


少女  ねぇ
男 うん?
少女  死ぬってなんなの?
男  なんだそれ
少女  図書室で読んだ
男  あー……そうか
少女  なんなの?
男  また授業でやるよ
少女  難しいことなの?
男  難しくないよ
少女  じゃあ教えてよ
男  難しくはないんだが……

少女、男をみている

男  わかったよ。簡単に教えてやる
少女  うん
男  ずっと寝てしまうことだ
少女  ずっと?
男  もう起きない
少女  なんで?
男  そりゃわからん。でも、起きないんだ
少女  ……
男  ……嫌か?
少女  うぅん、よくわかんない
男  だろ?
少女  うん。難しい
男  ずっと起きないから、土に埋めるんだ
少女  土に?
男  そう
少女  花が咲くの?
男  いや、花が咲くから埋めるんじゃなくてな
少女  なに?
男  まぁ、埋めないといけないんだ
少女  埋めなかったらどうなるの?
男  まぁ、埋めないといけないんだ。それに、埋めたらもしかしたら花が咲くかもしれない
少女  やっぱり咲くんじゃん
男  まあな
少女  でも埋めちゃっていいの? 本当に起きないの?
男  起きないよ
少女  寝てるのに
男  寝てるんだけどな、そのときは心臓が動いてないんだ
少女  それだけ?
男  ん?
少女  心臓が動かないだけで、起きられなくなるの?
男  そうだ。それに、一度止まるともう動かない
少女  ふうん、変なの
男  そうだ、変だな
少女  それで、いつ止まるの
男  ……いつだろうなあ。まぁ、お前らより俺らの方が早く止まるのは確かだ
少女  そっか
男  嫌か?
少女  嫌

暗転

うっすらとした明かり
男が女を下手から上手へとゆっくり運ぶ。女は死んでいる。少年と少女は泣きながら男のあとについていく。

少年と少女が男を上手から下手へとゆっくり運ぶ。男は死んでいる。少年と少女は顔を伏せている。

暗転

少年を演じていた役者が男を演じ、男を演じていた役者が少年を演じる。
少女の役者も同様に入れ替わる。
男と女の衣装は原色、少年と少女の衣装はモノクロ。女の衣装には、どこかに花がついている。

明転
女が授業をしている。少年と少女は授業を聞いている。男は少年と少女の横に座っている。

女  そんな訳で、このドームは常に安定した気温と気候が保たれているの
少年  エネルギーが切れることはないの?
女  えぇと、簡単にいうと、この星の真ん中からエネルギーをとってるから、エネルギーが切れるとしたらこの星が爆発するときよ
少年  えっ、それっていつくらい?
女  大体20億年後
少年  20お、く
女  まぁだから、問題ないわ
男  だからお前たちは、何も考えずに飯食ってクソして生きてりゃいいんだ
少女  ねぇ
男  なんだ、クソか?
少女  なんの為に生きるの?
男  ……なんの為?
少女  何もしなくてもご飯が食べれて、ずっと明るくて、暑くも寒くもなくて、私たちは何をしたらいいの?
男  何もしなくてもいい
少年  何も?
男  そうだ、何も、だ
少年  ……ふうん

ゆっくり暗転
会話の途中からゆっくり明るくなっていく
男と女、酒を飲んでいる

女  もう、やめたら?
男  ……飲まないでやってられるかよ

女、少し笑う

男  なんだよ
女  うぅん、あの二人も、もしかしたらおんなじ気持ちだったのかなって
男  あぁ……、よく二日酔いしてたな
女  うん


男  なあ
女  うん?
男  本当に、外に出たら死ぬのか?
女  何回め? 死ぬかわからないから出られないんでしょ
男  もしかしたら、生きられるかもしれないんだろ
女  もしかしたら、死ぬわよ。私達だけじゃなくて、あの子たちも含めて
男  ……
女  ね、そうやって生きていくしかないの。そうやって、ずっと生きてるのよ
男  生きてるんじゃなくて、死んでないだけじゃないのか
女  そうよ、それは、いけないの?
男  最悪だね
女  最高なのかもしれないわ
男  なにがだよ
女  尽きることのない食料に、常に雲一つない青空。もしかしたら、天国なのかもしれないわね
男  そう考えられたら、幸せなのか?
女  そう考えて、あの人たちも大人になったんじゃないかなって
男  そうだな

ゆっくり暗転

明転

下手から上手へ、女が男をゆっくりと運ぶ。男は死んでいる。その後ろに少年と少女が泣きながらついていく

上手から下手へ、少年と少女が女を運ぶ。女は死んでいる。少年と少女はうつむいている

少年を演じていた役者が男を演じ、男を演じていた役者が少年を演じる。 少女の役者も同様に入れ替わる。
男と女の衣装はモノクロ、少年と少女の衣装は原色。男の衣装には、どこかに花がついている。

暗転
明転

男が授業をしている。少年と少女が授業を受けている。女はうつむいて、少年と少女の隣に座っている。

男  と、ここまでが死だ。わかったか?

少年と少女、腑に落ちない表情

男  まぁ、そうだわな。体験するまではわからんだろうな
少年  どうやって体験するの?
男  ……まぁ、いつかは体験するんだ。
女  そう、ね
少女  お腹すいたー
少年  あ、俺も!
男  よし、じゃ、飯にするか

男、はける
女、少年と少女を抱きしめる。そのとき、二人に耳打ちをする。なにか言おうとする二人にしーのポーズをする。
男、シートとバスケットをもってくる。四人で食事の準備をする。

男  よし、じゃあ手を合わせて
全員  いただきます

サンドイッチのようなものを食べている
ゆっくりと暗転

薄暗い明かり
男と女、お酒を飲んでいる

男  これ(酒)だけが楽しみだな
女  ねぇ
男  うん?
女  外に出ない?
男  ……
女  このまま、生きてるか死んでるかわからないまま続けるの?
男  俺らだけだったらいいんだよ。そうじゃないだろ
女  あの子たちも、大人になって、諦めて生きるの? それって生きてるっていうの?
男  生きてるだろ、飯食って寝て、それの何が不満だよ
女  だって、私たちは、空を見たことがないでしょ
男  毎日みてるだろ
女  いつもいつも、雲一つない青空。あんなの空じゃない
男  じゃあなんだよ、ちゃんとした空をみたいからって理由であいつらを殺すのかよ
女  気候変動で外は人間が住める環境じゃない……、そんなの本当に信じてるの?
男  信じるもなにも、そうじゃないとここで生きてる理由がないだろ
女  なんの為に生きてるの
男  あいつらの為だよ
女  そうして、ここで何世代も何世代もずっと生きてきたんでしょ
男  ……
女  もう、いいじゃない
男  でも、あいつらは、まだ子供だ
女  そう、だから、ずっと死ぬ直前になるまで教えてくれなかったんでしょうね
男  それが、あいつらにとって一番なんだ
女  そう、それが大人になる時間なのよね、きっと
男  あぁ
女  ごめんなさい
男  ん?
女  私はあの子たちを大人にする

少年と少女が、入ってくる

男  お前ら!ずっとそこにいたのか
女  これで、私たちと同じように、この子たちは大人よ
男  ……
少年  外に行くと死ぬの?
男  そう、言われた
少女 それは本当なの?
男  本当かどうかなんてわからない。でも、扉をあけて毒が入ると全員死ぬ
少年  (少女に)ねぇ。死ぬの、こわい?
少女  わかんない
男  まだ大人じゃないからだ
女  大人でもわかんないわよ。死んだことないんだから
男  死ぬかもしれないんだぞ
女  生きるかもしれない
少年  空って、青色じゃないの?
男  いや、それだけじゃなくて……、白い、雲ってものが浮いてるかもしれない
少女  さわれるの?
女  それは、わからないわ。ここにいる大人は、子供だから
少女  子供なの?
女  あなたたちが知ってることと同じことしかしらないわ
少年  本当?
男  本当だ。あの、なにも浮かんでない青い空しかみたことない
少女  そっか、一緒だね
男  そうだ、一緒だ
女  そう、一緒だから、ここにいる四人は大人で子供で一緒だから、生きるか死ぬか四人で決めなきゃいけないの
男  ……
少年  わかった

少女、ゆっくりうなづく

暗転

明転

四人、舞台前面に並んでいる。少年と少女、楽しそうにしている。女、険しい表情をしてい
る。男、悲しそうに、服についた花を舞台上に捨てる

全員、舞台上から前へ進み、舞台を降りる。観客の顔を一通りみたあと、全員ゆっくりと上を見上げる。雲が浮かんだ空があるのか、暗雲が垂れ込めているのかは、観客にはわからない。

暗転

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